転移性骨腫瘍のある患者の理学療法の進め方

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転移性骨腫瘍のある患者の理学療法の進め方
中村大輔,島津尚子,畠中泰司,水落和也,松宮美奈
PTジャーナル・第45巻第5号・2011年5月 P391-397






 転移性骨腫瘍の基礎から理学療法の注意点,目標設定の仕方等のまさに運動療法の進め方に関しての考え方が紹介されている.

 骨転移の概要,骨の変化,発生頻度や好発部位から評価,ゴール設定,動作指導等が順序立てて書いてある.また,動作に関しては,症例を用いた理学療法の実際と図を用いて(寝返り・起き上がり)説明してあるので,是非,一読をお勧めしたい内容である.
 
 忙しいセラピストであれば,表1の骨転移を有する患者様へアプローチする上での確認項目として非常に簡潔にまとめられている為,表1だけでも目を通して欲しいと思う.

 転移性骨腫瘍を有する患者様やご家族へ,リハビリテーションの進め方であり,捉え方である為,絶対的な方法じゃないという注意点も説明しており,目線を教えてくれる非常に分かりやすい内容だと思う.


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・ 転移における骨の変化
溶解性の変化:破骨細胞の活性化により骨吸収の促進による
造骨性の変化:骨折と同様の損傷部位の骨新生による
混合性の変化
:つまり,骨吸収が優位であれば溶解性の変化であり,造骨が優位であれば造骨性の変化が生じる.文献内では,骨の変化が何癌に多いのかが紹介されている為,患者様の状態に関してセラピストとして,「なぜ痛みが出ているのか」という考察に対してのヒントになると思う.

・全癌患者の10%程度に骨転移が診断される
:骨転移のリスクを考慮する上で,原発部位と予後の理解は必須だと思う.10%に骨転移の可能性があるという,知っておくべき知識だと思う.

 疼痛に関して,骨や動作による疼痛はセラピストとして,第一に考えてしまう点だと思う.しかし,予後や家族との別れも含めた患者情報に加え,社会・環境・身体というICFで考えるべき情報全てを考慮する重要性を改めて感じた.
記事:ひわ

便失禁の診断と治療

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便失禁の診断と治療
味村俊樹
消化器科,46(6):607−617,2008







 便失禁について疫学調査結果,診断・原因・検査法・治療法が端的に書かれている内容である.

 便失禁について基本的なポイントから抑えてある為,便失禁導入として非常に有用な文献であると感じる.

 便失禁の原因と障害に関与している因子が表にまとめられている為,この表を一読するだけでもお勧めしたい.

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・ 英文文献:一般住民の1割強〜15%が便失禁を有する
本文献での疫学調査(65歳以上対象):7.5%が便失禁を有し,2%が毎日悩まされている.
:尿失禁と同じく,便失禁も身近に起こりうる可能性が高いと,文献を読めば読むほど感じる.ニオイも含め,羞恥心が行動範囲を狭めていると考えられる.Drだけでなく,Ns,CW,セラピストも含めた現場スタッフが,「便失禁」と結果を捉えるだけでなく,原因を考える事が重要な要素だと思う.

・ 便失禁は腹痛や嘔吐と同様に症状名であり,原因が多数の病態に存在しうる事を明記する必要がある.
:非常に端的な文章ながら,あくまで現象と疾患を区別して記載する必要性を改めて感じる.

 便失禁に関して,私を含め対応に困るセラピストが多いと思う.味村氏が「はじめに」で,「日常に多大な影響を及ぼす病態ながら医療機関を訪れる事は少なく,良性の疾患も患者の羞恥心をおいて,症状が改善する可能性があるという認識が,患者だけでなく医療関係者でも低い為と考えられる.」とある.だからこそ便失禁がなぜ起こってしまうのかを考え,臨床に活かす必要性があると思う.
記事:ひわ

職場における安全管理

職場における安全管理
山上潤一,加賀谷斉,才藤栄一
PTジャーナル・第48巻第10号・2014年10月 P909-915






 職場においてのインシデント,アクシデントについてどのように考えるのか,事故が起こったらどのように対応するのかが書かれている.

安全とは
「安らかであって危険がない事」という本文中にもあるが,否定的な表現で,危なくないもの程度の定義でしかない.

 ヒューマンエラーは起こりうるものであり,ヒューマンエラー自体が事故の根本原因ではなく,何をヒューマンエラーとするべきか,どこ,どのレベルに問題があったのかを考える必要があるが,その問題点の解釈の違いによって対策も異なる.つまり正しく対応という言葉すら,抽象的であり,どのように集団で捉え考えるのかが大事かという事がわかる.

 コストと安全の向上度や,ノンテクニカルスキルに関して,医療的な技術を求めるセラピストとしての意識とは別に,知っておく知識であり,考え方だと思う.


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・ 個人の意識・能力・注意におしつけ問題を解決する対策では,再発防止は不可能である
:そもそもエラーを「0」にする事は不可能であり,ヒューマンエラーを個人でコントロールはできないと本文でも書かれている通り,個に問題を押し付ける事は,対策でも対応でもない.本来の解決とは,集団で捉えるべきだという部分はこの文献の読みどころだと思う.

 「逃げない,隠さない,誤魔化さない」というヒトとして当たり前のような部分が,アクシデントを責める風習や空気感が,人間の負の部分を促してしまうと文献を読んでいて感じた.セラピストとして誠実である事,失敗を認め,どうすればもっと良くなるのかをチームとして,会社として考え続ける事が重要だと改めて感じた.
記事:ひわ