アキレス腱炎,足底筋膜炎から見た歩行の運動連鎖

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アキレス腱炎,足底筋膜炎から見た歩行の運動連鎖
近藤崇史
PTジャーナル・第47巻第2号・2013年2月 P153-159






 アキレス腱炎・足底筋膜炎を代表疾患として,歩行(踵離地)と足関節・足趾の動きがどのように代償するのか,どのように評価・アプローチするべきかが紹介されている.

 解剖学の基礎から運動学の考えである運動連鎖から説明されており,最終的には著者の行っている評価・アプローチ・考察が丁寧に説明してあり,非常に応用性の高い情報が著されていると思う.

特に歩行の踵離地が遅れるという現象を,
・ 歩行時の身体重心と床反力作用点
・ 股関節・足関節・足趾モーメントの力学作用
・ 足関節とMP関節の関節運動
の部分は上記疾患に限らず歩行を考える上で,踵離地タイミングが遅滞するとどのように重心,力学作用,関節運動が生じるのかの理解を促す為に,一読をお勧めしたい.


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・ アキレス腱炎・足底筋膜炎の評価
関節可動域・筋力等の機能評価,歩容等の能力評価は,直接的に結びにくく統合と解釈が難しい.障害の度合いや治療の効果判定を行う上で歩行と機能障害の中間に当たる評価が必要.
:実際の重心や体幹と股関節の伸展モーメントを考えた評価については,図も用いて説明してある為,文献を参照して欲しい.私が着目した部分として,理学療法評価法に基づく評価は再現性を考慮しても重要な項目ながら,現場において動作性と機能評価の橋渡しに当たる評価が紹介されている部分である.この部分を考察し試行錯誤して,治療アプローチを考えていく事がセラピストの醍醐味の部分でもあり,セラピストの治療結果の差が出る部分だと思う.

 教科書にはなかなか紹介されず,先輩に聞いても端的に教えてもらう事もない情報であり,「セラピストの頭の中で,どのように捉えているのか」を教えてくれる文献だと感じた.
記事:ひわ

脳疾患に起因する視覚認知障害に対する理学療法

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脳疾患に起因する視覚認知障害に対する理学療法
波多野直
理学療法30巻7号 2013年7月 P780-790







 認知視覚障害に対して,臨床でどのポイントに工夫・支援するべきか,目線やセラピストのケアの位置にまで触れている内容である.

 物理的な支援,理学療法士としての関わり方,情報の簡素化,歩行時目線,リラクセーションの方法と留意点,各種視野障害の対応・・・と内容が多岐にわたる為,まずアブストラクトと図に眼を通す事をお勧めしたい.

 10ページを超える内容ながら,技術やHow toでなく,本来セラピストとしてどのポイントに注意して,脳疾患由来の視覚認知障害に関わるか?という原点の部分が書かれている為,臨床においてすぐに役に立つ内容であると感じる.

 リラクセーションを行う際に,視覚認知障害患者が機能不全となりやすい筋が表になっており,さらに簡単な方法やポジショニングも紹介されているので,現行で行っている肢位を見直すきっかけになると思う.


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・ 情報処理の簡素化
1. 視覚情報の整理→目的行為へ集中を促す
2. 声かけの内容を配慮→失敗,拙劣に関する事に注意する
3. 動作練習の流れを分ける→手順の認識を促す
:患者様へのベターな運動療法を提供する為に,過剰な情報を与えすぎない事だと改めて感じる.しかし,簡素化する事と身体的な動きや運動目的を伝える事を混同してはならないとも読んでいて感じた.

 波多野氏も「おわりに」で書かれているが,脳疾患に起因した視覚認知障害をセラピストとして直接介入する事は困難である.だからこそ工夫と配慮を行いつつも,本来あるべき姿勢・運動の介入をする必要がある.技術や経験則だけでなく,しっかりと患者様を捉える事の重要性を改めて感じた.
記事:ひわ

難治性肩関節拘縮(肩関節周囲炎)の治療

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難治性肩関節拘縮(肩関節周囲炎)の治療
米田稔,阿部真行,田中健毅,永富孝幸,山田真一,佐原亘
日整会誌(J.Jpn.Orthop.Assoc)88:248−256 2014






 肩関節周囲炎の治療方法について,医師の視点からどのように診断に繋げていくのか,治療プログラムを立てるのか,スタッフへの指示,患者の指導を行うのかが書かれている.

 治療結果からの統計と考察が書かれている為,内容も理解しやすい作りとなっている.図も多くわかりやすいが,医師がどのように肩関節周囲炎を判断し,運動療法指示を出すのかという部分も含めて,是非一読をお勧めしたい.

 読む時間がないのであれば,「まとめ」の部分だけでも是非目を通して欲しい.


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・ 肩関節周囲炎を難治性に陥らせてしまう要因の一つとして,発症初期における積極的すぎる誤った運動療法が挙げられる.
:肩関節の動作性を高めるのではなく,姿勢から静止アライメントを整え,体幹屈曲・伸展・回旋や腱板・周囲のアウターマッスルの筋緊張を緩和するように努める.さらに等尺性収縮を中心に行い,関節の固定を促す事で,炎症や関節内の組織が細胞レベルでの修復した時期に,関節運動を行うべきかと読んでいて感じた.

 セラピスト初期介入の誤りから,難治例となってしまう事は避ける必要がある.そのためにも,解剖学の知識だけでなく,ミクロな視点での回復過程を考察する為の生理学,関節負荷を下げる動作を考える為の運動学をフル活用する必要性は言うまでもないと思う.

 医師の業務を理解するわけではなく,医師がセラピストに指示出す際にどこに着目しているのかという部分を感じるきっかけになると思う.
記事:ひわ