高齢者虐待

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高齢者虐待
新野直明
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION Vol.21 No.6 2012 P597-601






 日本の医療・福祉において、高齢者と関わらせていただく機会は多い。社会問題である高齢者の虐待について、定義、実態、分類、発生要因についてまとめている内容である。

 高齢者の虐待の現状として、養護者と施設に大きく分けてあり、さらに、虐待の種類、介護認定別、続柄別、介護福祉施設別、職種別、で分類されて調査されている。

2010年度の調査では、
① 身体的虐待
② 心理的虐待
③ 介護等放棄
④ 経済的虐待
⑤ 性的虐待
の順で多く、7割が高齢女性を占めている。



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・ 高齢者虐待の件数
 相談、通報件数は約25,000件、自治体調査で虐待判明件数は約16,500件
 虐待件数が増えているとは限らないが、認識されている件数が増えている。(詳細数は文献参照)

 そもそも、2006年に高齢者虐待防止法が始まったが、どの点・どの部分が虐待なのかは法律では決められない。身体的虐待以外の虐待(心理的虐待、経済的虐待)に関して言えば、介護を受ける側がどう感じるかの問題も含んでしまうので、0件にするというのは難しい。
 医療・介護のプロがいる施設においての虐待件数は、在宅虐待件数よりも少ない。「虐待をなくす」→身体的虐待に対し「0」を目指す→まず身体拘束をなくす→車椅子に座らせきりをなくす・・・等、具体性をもった目標から、たてる必要があると思う。
記事:ひわ

地域包括ケア病棟を検証する

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地域包括ケア病棟を検証する
藤森研司
PTジャーナル・第50巻第12号・2016年12月 P1077−1083







 地域包括ケア病棟の目的から要件,現状と展望が検証されている内容である.

 国が超高齢社会に対してどのような政策をとり,医療保険並びに介護保険の報酬がどのように変化をたどるのかを考える上で,2014年に創設された地域包括ケア病棟入院料と管理料を知る事は非常に重要だと思う.

 概念として,亜急性期入院料を算定する病棟の機能を拡張し,地域包括ケア病棟がある.患者の病態にあわせて適切な医療を過不足なく整備するという目的は非常に理にかなっており,①急性期医療から受け入れ,②在宅医療への復帰支援,③救急時受入という機能も,今後の高齢化率と傷病率を考える上で,国の求める流れの理解に直結していると思う.

 要件に関して実際の入院料に関する点数も詳しく紹介されており,さらにDPCとの関係性から著者である藤森氏の考えも一部書かれている部分は,本文献の読みどころだと思う.

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・ 地域包括ケア病棟へ転換した医療機関のアンケート
「地域のニーズ」「患者に即した医療を提供できる」
「収益を上げやすい」「平均在院日数の要件が施設基準にない」
:実際に転換した医療機関の情報が結果で紹介されており,アンケート自体の割合は本文献を参照して欲しいものの,患者様への提供できる医療サービスだけでなく,経営上の理由まで紹介されている為,転換予定の施設だけでなく,一つの方法の理解として一読をお勧めしたい.

 現状として地域包括ケア病棟での現状として,傷病している疾患順に紹介されている部分と回復期病棟と地域包括ケア病棟の違いが経営的な視点で書かれている部分は,この文献の読みどころとして,是非お勧めしたい.

 地域包括ケア病棟の仕組みは,経営者・管理者が理解すればいいだけのものではなく,全てのセラピストが国の方針を理解する上で知るべき知識だと思う.この文献を「地域包括ケア病棟」の理解の導入として読み・理解する事は,自らの勤務地の職域や選択肢が増え,会社にとっても有益な情報になると感じた.

記事:ひわ



老年症候群と理学療法 理学療法で頻尿・失禁や便秘は改善するか?

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老年症候群と理学療法 理学療法で頻尿・失禁や便秘は改善するか?
橋立博幸
PTジャーナル・第48巻第5号・2014年5月 P423-432







 題名の通り,セラピストとして老年症候群である排泄の問題に対してどのように関わるのかが書かれている.

 尿失禁の概要から,下部尿路障害への関わり方,習慣化,便秘の病態,運動療法による対策方法に関して,文献の内容は多岐にわたる.骨盤底筋体操の含め,運動目的・方法・負荷・頻度が例として書かれている為,排泄に関わるセラピストが知識の導入として使用して欲しい文献だと感じた.

 文献が高齢者尿失禁ガイドラインに沿って説明してあり,ガイドラインの抜粋も表として紹介している為,病態の理解とセラピストとして正しく対応する基礎知識が紹介されている.

 便秘に関してセラピストの関わり方は,排尿に比べて参考資料は少ない.その中で腹部マッサージ方法が図と共に説明してある為,エビデンスとしての不十分さを感じるものの,ホームエクササイズの一つとして知っておく必要があると思う.

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・ 認知機能障害による排尿習慣化が困難な方に,約3ヶ月間の個別排尿パターンでの排尿誘導により尿失禁の改善が見られた.
:排尿パターンによる排尿誘導は推奨グレードBながら,患者様ごとに排尿パターンの把握が重要性であり,全ての患者様において2時間ないし3時間おきのルーティーン排尿誘導では意味がないと文献を読んでいて感じた.

 「おわりに」でも,橋立氏も述べているが、排泄障害に関わる事は,身体的・心理的・社会的にも個人のパーソナルスペースに大分踏み込んでいく事になる為,信頼関係構築の為に言葉の配慮も重要であると感じる.患者様に対し,セラピストとして関わる以前に,どのように介入するのか?を改めて考えるきっかけになった文献である.
記事:ひわ