歩行支援機器の現状と未来

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歩行支援機器の現状と未来
大畑光司
PTジャーナル・第49巻第10号・2015年10月 P883-888






 歩行支援機器がどういう存在であり,今後どのように発展してくのかについて,現状の歩行支援機器の分類からセラピストの展望に触れている内容である.

歩行支援の分類(詳細は文献参照)
機能補完
:杖や歩行器等,使用により歩行能力を高める歩行支援技術
トレーニング支援
:平行棒,トレッドミルやロボットアシスト歩行等,トレーニングを目的とした歩行支援技術
歩行支援を2つ分類しており,歩行というキーワードから感じる事が,セラピストとしてあると思う.本文では各分類のジレンマ,効果検証という流れで書かれており,非常に面白い内容だと思う.

 「歩行」というのは,移動の1つの手段であり,ICFの観点から歩行支援をどのように捉えるのかについて書かれており,面白い切り口の文献だと感じた.また,AS neededという考え方は,大畑氏が簡便で非常面白い内容のため一読をお勧めしたい.

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・ 例として,下垂足にAFOを用いる事で歩行機能を援助する環境を整えるという一方で,装具による固定から立脚初期の足関節接地等,歩行機能の底上げとその対側の効果というジレンマがある.
:セラピストである以上常に悩みぬく選択の一つであるが,機能補完を目的とする歩行支援において,改善傾向に繋がるという著者の推論は必見である.最終的には,患者様の残存能力と環境等,ICFの視点で考慮すべき部分もあるが先輩の推論を垣間見る面白い内容だと思う.

 歩行器支援機器におけるセラピストの役割に関して,納得の内容が書かれている文献である.ヒト対ヒトである医療・福祉において,セラピストが繋ぎの仕事ができ,そして,歩行支援機器は手段の一つである事に関して,忘れてはならないと改めて感じた.
記事:ひわ



スロープの設置

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スロープの設置
笠井史人
JOUNAL OF CLINICAL REHABILITATION Vol. 23 No.1 2014.1 P90-94







 スロープ設置における基本事項と法律での基準,症例から実際の導入例が紹介されている内容である.

 文献の要点を図1,2により紹介してある為,情報の共有にも使用しやすい.スロープを設置する時のスロープ材質についてメリット・デメリットがしっかりと書いてある部分が,この文献の面白い部分だと思う.

スロープ設置の法定基準
・ 勾配1/12以下(車椅子自走が1/12とされている)
・ 高さ750mmごとに1500mm以上踊り場の設置
・ 幅1200mm以上
(ヒトとすれ違う作りにする際には1500mm,車椅子同士すれ違う作りの際には1800mm以上スロープ幅が必要)

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・ スロープの選択
患者様の能力・段差の場所・高さ・スペース・利用の頻度・車椅子の種類・介助者の介助力・車椅子の操作能力等があり,パーキンソニズム等のバランス悪化は,スロープが移動しにくい事もある.
:家族も使用する家に関して「段差は悪」ではなく,スロープを設置した方が患者様・家族の全体を見て良いかどうか判断しなければならないと思う.人間は老化により身体能力は緩やかに低下する為,予後も考えた長期での視点が重要だと感じるが,スロープだけに捉われず段差解消機等の柔軟な対応が求められると思う.

 セラピストとして杖の選定や靴の選定を行う事は多い.しかし,予後や現存の身体機能・ヒトが活きる事を考える職種として,環境調整の知識は持つべきだと思う.日本が世界を代表する福祉国家となるように,良い意味での知識を高めなければならないと感じた.
記事:ひわ



前腕支持台が歩行車歩行に及ぼす影響

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前腕支持台が歩行車歩行に及ぼす影響
藤田大介、小原謙一、大坂裕、渡邉進、新谷哲平、杉村卓哉、牧野健二、森川綱善
リハビリテーション・エンジニアリングVol.27 No.2 2012 P83−88






 臨床現場において歩行器、歩行車は実際に使用頻度の高い歩行補助具といえる。前腕を支持することで、楽に歩けるというのは私たちでも体験可能であり、その方が楽だということも想像できる。この研究は、前腕支持歩行車を使う事で、その体感的に楽なのは、どの筋肉が優位に負荷が小さくなるのかの報告である。

 当たり前だと思う事を証明すると言う事は難しいと思う。
比較方法:前腕支持台使用(高位、低位)、なし
筋電図:大殿筋、大腿直筋、腓腹筋
の3種類、3筋肉の比較のため、明快に結果が理解できる文献だ。

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・ 前腕支持台があることで、立脚期後半の下肢荷重量が少なくなる。
→楽だと感じていたのは、体重支持しているからではなく、前方への加速をする際に、荷重量が少ないから小さい力でも強いトルクが発生すると理解した。

残った疑問!
・ この前腕支持する姿勢を維持する事で、インナーマッスルの筋緊張は落ちるのではないか?(移動のリスクは小さいに限るが・・・)
→是非、インナーマッスルの働きについても研究がなされて欲しい。その際は必ず目を通したいと感じる。

大殿筋、大腿直筋、腓腹筋は人体における強力なアウターマッスルなので、この文献の内容が、「何らかの原因で筋出力が弱い方に、前腕支持型の歩行車を勧めるエビデンス」となるため、読む価値のある文献だと思う。
記事:ひわ