多発性硬化症患者に対する発症初期から生活期までの理学療法の関わり

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多発性硬化症患者に対する発症初期から生活期までの理学療法の関わり
中城雄一,森若文雄
理学療法34巻8号2017年8月P708-717






 多発性硬化症に対して概要から,類似疾患との違いの明示,治療方法と療法士の介入方法に関して症例を挙げて紹介している内容である.

 教科書の要点をまとめた説明から概要が書かれており,患者さんの目標が多岐にわたる事を「はじめに」で示しており,指定難病への対応と疾患の視点以外からも生活期の視点が提案されている部分はこの文献の面白い部分だと思う.

 視神経脊髄炎との違いが書いてあり,多発性硬化症とは異なる疾患と認識されていると研究成果が出されている.また,表1の「リハビリテーション職が知っておくとよいと思われる中枢神経系炎症性脱髄疾患の概要」というストレートな表題であり,わかりやすい表に関しては一読をお勧めしたい.

 読み進めていくと,医学モデルでの治療という視点と疲労への注意した上で,「QOLへ重点」におく考え方が紹介されてあり,急性期からの目標志向の重要性が書かれている.また,後述している内容に,患者さんと信頼関係構築する具体例が紹介されており,高齢者にありがちである“先生にお任せ“というスタンスではなく,「治療の有効性,経済性,医療関係者との関係」が挙げられ,患者さんとの関係次第で教えてもらえる情報も違い,聴取できるか否かがポイントになると感じた.

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・全世界で250万人,本邦で1万3千人
H27年度の特定医療費受給者証所持者数(視神経脊髄炎含め)1万9千人
:中枢神経系炎症性脱髄疾患という指定難病において,1万人を超えており,明確な治療計画が単なる対症療法とならないように,ゴール設定とそのプロセスを重視するアプローチの仕方が重要である.

 当然ながら,筋持久力の獲得は非常に重要だが,その負荷調整には患者さんからの情報と評価から見抜く2点が重要となる.この文献の読みどころである,病期に応じた状況と対応が説明されている部分は,多発性硬化症の症状だけでなく合併症がある場合にも参考になる内容であり,知識を有することの重要性を改めて感じた.

 ゴールに関して,「動きが良くなる」だけではダメで,中城氏も繰り返し本文中に述べているように,再発や増悪・寛解を繰り返すからこそ,小さな変化を伝えられるセラピストの存在が大事であり,疲労を最小限に抑える動作方法や運動時の負荷設定と考えるべきポイントは山積みであると強く感じた.
記事:ひわ